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建築家インタヴュー
<桑原公氏によるインタヴュー記事・2002年>

荒木毅という建築家を語る場合、まず最初に頭に浮かぶ言葉は「シャイ」である。
初対面の人と和んだ雰囲気になるまでに時間がかかる。
平たく言えば人見知りなのだが、打ち解けてくると柔和な笑顔で話も弾み出す。
荒木さんに初めて会ったのはもう2年も前のことだが、伏し目がちに話していた映像を今も憶えている。
この方も先にご案内した大場さん同様、いい年齢。
熟練の仕掛け技を持った45歳だ。
何しろ今回の特集は「仕掛けのある空間づくり」で“評判の”建築家たちだから、経験豊富なスペシャリストでなければならない。
空間づくりに答えを出す“引き出しの数”が抜きん出ているのが絶対条件なのだ。
では、荒木さんが得意とする空間づくりの仕掛けは何か?
これはもうコートハウスの一言に尽きる。
コートハウスの達人と呼んでも可笑しくない。
何しろ自作にCH(コートハウス)シリーズというタイトルを付けているくらいだから、荒木さんとしてもかなり本気である。
プロトハウスプランにも「オープンコートハウス」というプランを発表しているのだ。
しかしどうして荒木さんはコートハウスにこだわるのだろう?
そんなところから訊いてみた。


「僕のクライアントは都会に住んでいる方が多いんですね。年齢的には30〜40代でサラリーマン世帯です。都会の住宅は建物が密集した狭小地に建つ場合が多く、そういう条件の中で太陽光を取り入れた住宅を建てようとすると、必然的にコートハウスという解決策を選択するケースが多いんですよ」

荒木さんは空間と構造が一体となったものが美しいと考えるという。
装飾性は極力排除し、構造をそのまま見せるようなシンプルなラインで空間を構成することが多い。


「住宅のデザインで心がけているのは、家族の場所を重視するということです。リビングとか多目的に使用できる土間的な空間を広くして、寝室などのプライベートな場所はコンパクトにまとめるんですね」

そのような家づくりの一つの方法としてコートハウスを採用することが多いという荒木さんだが、デザインにも個性を持たせている。

「コートを囲んで南棟と北棟を配置するケースでは、南棟の屋根を急な北勾配の斜の屋根にしています。そうすることで、冬でも北棟に十分な自然光を取り入れることができるんです。明確な目的から生まれた北勾配の屋根なんですが、それが意匠的にも気に入ってるんです」  

「土間のある家」に象徴される空間の有効活用

荒木さんの仕事の進め方はこうだ。
まず、荒木さんの事務所にて面談の後、設計契約を交わす。
それから約1ヵ月をかけて基本プランを提案することになるが、アイデアスケッチを描いている時が最も神経を使うという。
模型は必要に応じてその都度作成。イメージが固まりすぎないよう、1/50の白い無彩色の模型を造る。
荒木さんには「土間のある家」という傑作(本誌Vol.1に掲載)があるが、そのプランもこういうプロセスの中で生まれた。


「僕はあまり玄関というものが好きじゃないんです。限られた空間を有効に活用すると、玄関という用途に限定してしまうのはもったいない。『土間のある家』では、玄関部分を広くとって多目的に使える土間空間としたわけですが、そんな風に空間を有効活用することはよくあります。通路をとる代わりに、螺旋階段で1階と2階を直接結んでしまうとかね」

荒木さんの空間づくりの仕掛けを整理するとこうなる。
家族の集まる場所を重視し、プライベートな空間をコンパクトにまとめることでメリハリを付けた空間デザインを行う。
さらに空間の有効活用を行うために、通路や多目的室などを効率良く配置する。
狭小地にあっては、採光と通風を確保するためにコート(庭)を設けるとともに、空間と構造が一体となった美しい住宅を目指す。
このようなシンプルで合理的ともいえる設計ポリシーに基づいて完成した家は、荒木さん独特のモダンな佇まいを見せている。


「僕が手掛ける家はほとんどが都会の小さな家です。しかし限られた敷地面積の中でどんな工夫をするのかが楽しみでもある。そういう意味でも、僕は東京が好きですね。いろんな人や新しい建築物にも出会うことができるしね」

一見するとシャイな荒木さんだが、ここ20年来続けていることがある。1週間に1度は通っている合唱団での活動だ。

「声を出すのは健康にいい。それに、音楽と建築はどちらも構成物という点ではよく似ていると思います」 

都会派コートハウスの達人は、市民合唱団でベースを歌う都市文化人でもあるのだった。  
 




長年のスタッフである槻岡さんとはいいコンビだ。槻岡さん曰く「荒木さんは大きな子供みたいな人。ちょっと目を放すと、仲のいいお施主さんの家にすぐに遊びに行っちゃうんです」。

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