CH13/東京都 (previous page)コートハウス

中庭

CH13には、四畳半の小さな中庭があります。

CH13 中庭

模型写真-01

CH13は、中庭を居間などが取り囲んだかたちの住宅です。CH13の”CH”は、”コートハウス(中庭のある家)”の略です。

 

まずは、模型写真をご覧下さい。写真手前の”南棟”は、CHシリーズの特徴である北に急勾配の屋根を持ち、自身はハイサイドライトより光を採入れつつ、北棟への日射を妨げない形をしています。
また、奥に写っている”北棟”の大開口上部には庇が設けられ、冬の日差しを採入れつつも夏の日射を制御する工夫がされています。

CH13 模型写真-01

模型写真-02

南棟と北棟の間は、2階部分も1階の中庭同様にデッキとなっており、この住宅の内部と周囲の家々をやわらかく結びつける緩衝空間となっています(写真の日の当った淡い茶色の平らの部分)。

CH13 模型写真-02

模型写真-03

手前から、北棟2階-2階デッキ-南棟(平屋)。

CH13 模型写真-03

西側よりの外観

西側のブロッコリー畑よりCH13の外観を見ています。

 

左側の2階建ての部分が”北棟”、木製格子の付いた中庭を挟んで、右側の片流れの平屋が”南棟”です。
南棟のすぐ南側には隣家が迫っています。写真でも、隣家の軒をかすめた冬の日差しがハイサイドライトよりCH13の内部に入っているのが分かります。また、南棟が日差しの”邪魔をしていない”ので、北棟内部にも開口部を通して冬の日差しが注いでいます。

 

このように、CHシリーズは、合理的な採光がそのまま形になった外観をしているのが特徴です。

CH13 西側よりの外観

打合せ

完成したCH13を見る前に、打合せと工事中の写真をいくつか並べてみます。

 

打合せは、ご夫婦とお子さん二人のご家族が揃ってお出でになり事務所にて行いました。
打合せの間、子供達は絵を描いたりして遊んでましたが、この写真は何回目かの打合せ後のテーブルの上。
提示したCH13のヴォリューム模型(青色)の横にあるのは、S君が描いた”打合せ中の私の様子”の絵です。

CH13 打合せ

打合せ

荒木飛呂彦の”ジョジョの奇妙な冒険”に出てくるキャラクターの様な絵がとても面白かったので、ここに載せちゃいます。

CH13 打合せ

基礎

この住宅はベタ基礎です。住宅の建つところの下が全てコンクリートの基礎になっています。
CH13は1階の殆どが土間となっているので、基礎の下に夜間電力を利用した蓄熱式の床暖房を入れました。コンクリートは熱容量が大きいので冷めにくく、床暖房に向いているのです。

CH13 基礎

上棟-01

前々ページの完成後の外観の写真に近い角度からの、上棟時の写真です。

 

このように、棟上げの日の夕方には、前日まで基礎のコンクリートだけのあった場所に、完成後を彷彿とさせる外観が建ち上がります。

CH13 上棟-01

上棟02

少し近づいてみます。
赤色の綺麗な木材の架構が見えてきます。CH13は、骨組みを智頭杉(ちずすぎ)にて作られました。

CH13 上棟02

上棟-03

南棟の屋根が正面になりました。
一間半しか離れていませんが、垂直に壁が建っているのとは異なり、北棟2階から南を見た際に南棟からの圧迫感はありません。

CH13 上棟-03

上棟-04

屋上デッキの東端より西方向を眺めます。
広いデッキを挟んで、左側に南棟の勾配屋根、右に北棟の2階部分が見えています。

CH13 上棟-04

土俵(黒い人研ぎ)

建て主さんが後に”土俵”というニックネームをつける、土間部分の工事写真です。

 

1階は、全体がコンクリートのべた基礎を生かした土間となっていますが、コンクリートの広がりの上に15cmほど盛り上げて、黒い”人研ぎ”の土間床を作りました。
写真は、黒御影を入れたモルタルを土俵の様にエッジに丸みをつけて盛り上げた時点のものです。モルタルが固まった後、表面を研ぎ上げて艶のある綺麗な土間に仕上げて行きます。

CH13 土俵(黒い人研ぎ)

土俵(黒い人研ぎ)

 

CH13 土俵(黒い人研ぎ)

アプローチ

完成後のCH13に入って行きます。
写真はサッシュを利用した玄関引戸。屋外の土間と屋内の土間が連続しています。

CH13 アプローチ

土間より中庭方向を見る

好きな写真の一つです。
中央に智頭杉で作った格子と中庭のデッキ。その手前の黒い土間は”土俵”と名付けられた人研ぎの広場。左側に一段上がって杉板の居間、中庭を挟んで右側に書斎が見えています。

 

中庭を介して、書斎右の収納まで太陽光が差し込んでいるのが分かります(1月半ば)。
書斎部分の床が土間コンクリート、土俵の人研ぎの床は書斎より15cm高く、杉板の居間部分は、更に35cm高くなっています(これは腰掛けるに良い段差です)。

CH13 土間より中庭方向を見る

格子を開く

中庭の智頭杉の格子は、引戸になっておりこのように開く事もできます。

CH13 格子を開く

板間より土間を介して水回り方向を見る

手前の壁上部にはハイサイドライトからの光が、奥の水回りにも中庭や階段吹抜けを介して、太陽光が注いでいるのが分かります。

 

階段の先の収納は、半透明のアクリルで出来ているので、光がその先の水回りまで届きます。
手前の窓上にある水平の黒い帯は、電気の配線ダクトです。

CH13 板間より土間を介して水回り方向を見る

板間よりキッチンと玄関方向を見る。

CH13は骨組みを”現し”にした建築です。天井や壁のボードに隠されることなく仕上げられた柱や梁が形作る内部空間は、力強く生活を包み込んでくれます。

 

この現しの仕上げは、現場での体験から提案されたものです。現場においては、上棟後しばらくは骨組みが見える状態が続きますが、一般的には、その後の仕上げ工事のなかで壁や天井が貼られ、柱や梁は隠されて行きます。その際に、綺麗な仕上りと成って行くものの、それまであった骨組みのもつ迫力が失われて行くのが惜しいと感じることもありました。この力強さを保った空間を作る事が出来ないかと考え、現しを試みたのです。
このように構造の骨組みを表に出すことにより、内部空間は装飾的にカモフラージュされる事のない”簡潔”な空間にまた一歩近づけたと感じています。CH13では、外部の形体も内部空間と同じ形をしており、とてもシンプルなかたちとなっています。

 

CH13では、構造体の他、板間の板、中庭のデッキや格子に至るまで、智頭杉を使ってみました。

CH13 板間よりキッチンと玄関方向を見る。

キッチンより板間を見る

柱と梁が力強い空間を形作り、ハイサイドライトより南の光を採入れます。
柱の間が白い壁になっていますが、これはセラミック系の構造パネルを素地で使ったもので、この白も素材そのものの色です。
手前のキッチンはスチールとステンレスにて使い方がなどをお聴きして製作されました。

CH13 キッチンより板間を見る

居間全景

手前、左側の中庭、中央の人研ぎの黒い土間(土俵)、右の玄関土間。
中庭の先のコンクリートの土間部分は書斎、人研ぎの緩いスロープをまたいで右側にスチール製の螺旋階段。
さらにその奥には左側にトドマツの三層パネルで出来た収納、右側に半透明のアクリルで出来た収納。
その先が洗面所などの水回りとなっています。

 

収納内部の電球がアクリルの収納全体を照明器具に変えています。建て主は、”あんどん”と呼んでられます。

CH13 居間全景

中庭よりの夕景

中庭の嵌殺し窓の先に、土俵と玄関収納。右手に板間、左手に書斎のコンクリート土間。上部に2階デッキの手摺、上部左側に2階部分が見えています。
このように、中庭と2階デッキは隣り合って(上下につながって)います。

CH13 中庭よりの夕景

収納

建て主が”行灯(あんどん)”と呼ぶ、アクリルと智頭杉で作られた収納。
階段吹抜け上部からの太陽光をこの収納を通して1階北側奥まで届けるためと、内部に取り付けられた電球が夜にこの収納自体を照明器具に変えるために、これらの材料が選ばれました。
中に納められたモノがぼんやりと透けて見える収納です。この行灯の隣りには、トドパネルで作られた中の見えない収納があります。

CH13 収納

階段

階段はスチールだけで作られました。細い丸興が扇形の段板を2枚支え、そのまま上に伸びて手摺も支えている、単純な構造体です。
このシンプルな階段の横には、人研ぎの土間がスロープとなって洗面所に向い、行灯収納とトドパネル収納の間を通っています。

CH13 階段

2階ホール

階段を上がった2階は小さなホールになっています。
ここから広い屋外デッキに出られます。屋外デッキの向こうには南棟の屋根が見えています。また、このホールに差し込む光は、階段吹抜けを介して1階の奥まで届きます。
2階の床は、智頭杉の赤味と白太を交互に使って仕上げられました。

CH13 2階ホール

書斎コーナー

住まわれた後の中庭横の書斎コーナーです。
杉材現しの内部空間は、このように様々なものが置かれても、それらと馴染んで自然な雰囲気になっています。

CH13 書斎コーナー

キッチンより板間を見る

板間に腰掛けるS君。住まわれてからの様子です。

CH13 キッチンより板間を見る

子供室

2階に上がって、子供室の様子を見ています。
右がお姉ちゃん、左がS君。それぞれ3畳ほどの広さですが、智頭杉で作ったスノコベット、カウンターテーブルと写真では見えませんが手前にトドパネルで作ったクロゼットが揃っています。部屋と部屋の間はトドパネルの三枚引戸になっているので、写真のように開けて広く使う事もできます。

CH13 子供室

板間

板間に置かれた”ちゃぶ台”は、ご主人がデザインしてトドパネルで作られたものです。ご家族はここに坐って食事を摂ります。

CH13 板間

夕方

キッチンより家の中を見ています。土間に置かれた自転車もこの家のお洒落なインテリアになっているようです。

CH13 夕方

設計概要

4人家族のための木造2階建てのコートハウスです。家族の活動の場が連続し光の採入れが工夫された住宅は、素材を正直に使った簡潔な表現とされました。

 

平屋の南棟では南側ハイサイドライトより太陽光を採入れ、中庭側の軒を下げて太陽光を中庭や北棟にも届ける工夫をしています。
北棟は2階建てとし、中庭や吹抜けを介して南棟とつながっています。光の採入れの工夫がそのまま外観に現れ、特徴的かつ質素な立面となっています。

 

内部空間は、木軸を現しとし、構造体がそのまま内部空間になった簡潔な作りとなっています。
柱・梁は、赤味の木目の細かい智頭杉とし、真壁の部分にセラミック系構造面材を素地で張り、素材がそのまま仕上となった簡素な表現としました。
床は、土間コンクリート、人研ぎ、智頭杉を使い、生活の様々な場面に適合するよう、それぞれ高さの違う三種類の床面を作りました。

 

土間躯体の下に深夜電力利用の低音床暖房を敷き詰め、コンクリートの熱容量を十分に活用しました。
智頭杉の床や家具は、浮き床・浮き家具として土間の広がりが感じられるようにし、赤味と白太を使い分けて表現しました。内部建具や家具はトドパネルと智頭杉とアクリルで作り、外部デッキや格子にも智頭杉を使用しました。

 

1階模型-1

写真は1階の模型です。
玄関アプローチ側より眺めています。
薄いグレー色の部分がコンクリートの土間、黒い床が”人研ぎ”の土間、木の部分が中庭と板間です。
全体が一つながりの空間になっていますが、各室の間にいくつかの収納が土間から少し浮き上がって点在しています。

CH13 1階模型-1

1階模型-2

同じ模型を、中庭側から眺めています。

CH13 1階模型-2

断面図

冬場の太陽光は、ハイサイド窓から、中庭を介して、階段吹抜けを介して、1階の隅々まで注ぎます。夏の太陽光は庇などで制御されます。それらのことがそのまま形になった外観の家です。

CH13 断面図

設計概要

 建築用途 専用住宅
 主体構造 木造軸組工法2階建て
 敷地面積 120.38m2
 建築面積  64.75m2
 延床面積  90.03m2
 2010年1月

CH13
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